FM化検討 岩手放送 東北放送 ラジオ福島
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設備投資を抑えながら、難聴地域での情報発信手段の確保を目指しています。
震災の経験を踏まえ、情報インフラとしてのラジオの機能強化につなげます。
FM化を検討しているのはIBC岩手放送(盛岡市)、東北放送(仙台市)、ラジオ福島(福島市)の3局。
災害に備えた放送手段の確保は全国共通の課題で、東北ではほかにも前向き姿勢を示す放送局があります。
岩手放送 |
岩手放送は、震災後、岩手県山田町周辺でFMによる送信を試みました。
今後、ほかの地域にも拡大する考えです。
FM化を検討する背景には、送信所などの設備老朽化に伴う更新費の負担があります。
総務省によると、土地代を除く送信所の平均更新費用は、AMの8億7000万円に対し、FMはそのほぼ半分で済むそうです。
ラジオ福島(福島市)は、1953年の開局時のAMアンテナを使用しています。
ラジオ福島は「FMは音質も良く、設備費が抑えられるのが魅力。難聴地域を手始めに将来は県全体で移行したい」と意欲を示しています。
AMはFMより遠くまで電波を飛ばせるが、電波の特性上、アンテナ設置には半径数百メートルの平地が必要になります。
FMは、山頂など高い場所から電波を飛ばせます。
高台に設置できることで津波対策にも有効とされています。
東北放送(仙台市)は、1990年、AMの送信所を現在の仙台市若林区に移転したばかり。
東北放送は「宮城県内に目立った難聴地域はないが、中継局の老朽化が進んでいるのは事実。一部FM化は中長期的な課題だ」としています。
ラジオ福島 |
岩手、宮城、福島の被災3県の民放AMラジオ局が検討するFM化は、全国の放送局にとって共通の課題となっています。
高層建築物などによるAMの難聴地域を解消し、災害に強い放送を確保するのに有効とされているためです。
国は、FM化推進の構えで、今後、東北の他地域でも動きが広がる可能性があります。
NHKと短波局を加えた全国AMラジオ局を対象に総務省が4月に実施した調査では、49社中38社が災害や難聴対策のためFMによる中継局新設を希望すると回答。
これまで民放ラジオ局はAM、FMのそれぞれのデジタル化を検討していたが、民放連は3月、巨額の設備費を理由に業界全体での推進を断念。
デジタル化に代わる手段として、FM化が注目される形になりました。
東北放送 |
東北では、被災地の3局のほかにも、既に一部FM化を検討している局があります。
担当者は「難聴地域でAMの代替手段として実施し、災害時の放送を維持したい」と。
資金面に関しては「国の補助を期待したい」と打ち明けました。
国はFM化に前向きです。
総務省が2月に設立した「放送ネットワークの強靱(きょうじん)化に関する検討会」は、今月14日、AMラジオ局について「災害、難聴対策でFMの利用も必要」との中間骨子を作成しました。
6月末にも報告書の公表を予定しています。
放送制度に詳しい立教大社会学部の砂川浩慶准教授(メディア論)は「災害を考慮したFMの中継局設置は評価できる。地盤沈下が進むラジオの活性化のためにも、幅広い議論が必要になるだろう」と話してくれました。